つれづれマンガ日記 改

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リボンの騎士

(2012年評)

本作は、私の知る限りでは5回ほど
リメイクされている。

最も、最新のリメイクは絵柄も物語も
随分異なるので色々物議を醸しているようだが。

私の手元にあるのは、第三回目のリメイク版にあたる作品。
それでも、初出は昭和38年だ。

世の中に最初に「リボンの騎士」が登場したのは
昭和28年との事なのだから恐れ入る。

昭和28年に、ジェンダーの問題を取り上げた作品を
少女マンガで連載していた事がどれだけ前衛的な事なのか、
もはや私には見当がつかない。

もっとも、本人のあとがき曰く、
その頃はストーリー仕立ての
少女マンガ自体が少なかったそうだが。

それにしてもマンガの神様の
この幅広い貪欲さは一体何なのだろうか。

手塚治虫が宝塚出身であることを差し引いても、
およそ既存の枠に捕らわれていないスタイルが伝わってくる。


昨今改めて、手塚治虫の伝記的作品が
売れているのが個人的には不思議だった。

これだけ幅広いジャンルかつ
長きにわたってマンガを描き続けた人物が、
努力や苦悩の人であった事など当たり前だったからだ。

そんな当たり前の泥臭さを作品化したところで、
何が新しいのかわからなかった。

しかし、よくよく考えてみれば、手塚治虫没後から早20年である。
「神様」とだけ伝聞されてきた世代には、
人間的な逸話が伝わっていなかったのだろう。

改めて読み返せば、その独特の展開の速さは、
まだマンガに十分なページ数が
与えられていなかった時代故の苦労が伝わってくる。

現代のマンガを読んで育った人が、
本作にどれだけ感動するのかはわからないが、
手塚治虫の自伝の一部として、抑えておくべき作品なのだろう。

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