(2012年評)
作者名「えすとえむ」は、私の中で、
新作をチェックしなければいけない
マンガ家として刻まれた。
今回眺めているこのマンガがすごい
ランキング入り作品の中では、
現在、頭一つ抜けている。
そんな印象を受けた。
とにもかくにも、展開が独特にもかかわらず大変読みやすく、
ページをめくる手が止まらない。
35歳の学食勤めの女性と、21歳の大学生。
お互いがお互いを何となく意識しながら、お互いを妄想して、
けれども、2人の間にあるキーワードは、
「うどん」という単語のみ。
これで一冊の作品として膨らませ、
完結させているのだから、抜群の手腕だ。
ランキング入りした短編の多くは、残念ながら、
「最後まで結末を描かない」という意味を
履き違えている作品が多かった。
作者の想像力の不十分さを、
読者の想像にお任せします、
と言わんばかりに投げ出すラストシーンが多く、
いささか残念だったのだが、本作は違う。
2人の距離がどう変わったのか、
そのところは定かではない。
けれども、うどんを2人で食べるラストシーンを見れば、
自ずと行く末や2人の間の変化は読者の心の中に落ちてくるのだ。
この艶のある作品作りを是非、見習っていただきたい。
お勧めしたいマンガ家だ。