つれづれマンガ日記 改

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ダイアモンド・ヘッド

水城せとなの人間心理を描く才能には恐ろしさを感じる。

現在連載中の失恋ショコラティエでは、
本人が「ふつーっぽい作品を描いた」
というだけあって、その強力な牙を隠して
かなりマイルドな作品に仕上がっているが、
以前からの水城作品の読者から見るとそれが違和感でならない。

いつこの「ふつー」の雰囲気が叩き壊されて、
物語が壮絶な展開を迎えるのか。
そんな恐怖におびえながら読んでしまう。

それくらい、この作者の才能の牙は鋭いのだ。

のんびり恋愛作品を描いて満足しているとは、
とても思えないのである。

若干話を戻して本作に関してだが、
舞台はありがちな学園モノだが、
主人公たちが所属する部活は

「裁判部」

学校の生徒や先生の行いを、
「裁判部」の生徒が裁くという大変面白い舞台装置を備えた作品だ。

この裁判というスタイルが彼女の才能を一層際立たせる。
通常の裁判モノであれば、
お涙頂戴や、犯罪に絡めた展開で物語を作ることが可能だ。

けれども本作で裁くものは、
その手の類の裁判ではない。

学校生活における、いじめ、恋愛、部活、友情、
そういった裁くことが難しいものを裁くのだ。

これは生半のマンガ家に作れる作品ではない。

事実、本作を読んでみればわかるが、
とても思い返して楽しいストーリー構成にはなっていない。

けれども、恐ろしいかな

本作は他人に薦めたくなる作品なのだ。

決して幸せな、明るい作品ではない。
けれども、終わってみれば、読者の心は見事に裁かれ、
少しすっきりした気持ちで本作を読み終えるはずなのだ。

読者の心の中までも裁く、その心理描写の妙に、
思わずため息がでてしまう。

そんな傑作なのである。

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