つれづれマンガ日記 改

完結してる漫画をテーマに、なんとなく感想。 レビュー、評論、おすすめ、駄作、名作、etc

補助隊モズクス

異端の連載が多い雑誌「ハルタ」の中でも、
一際異彩を放ったグロテスクアクションの傑作。

ホテルの一室で突然現れた三匹の生き物と契約する事になった
平凡なサラリーマン「東海林」は、その三匹の式神を使い、
人間に取り付く化け物「倫虫」を滅ぼす役目を負うことになった。

こんな風に書くと、いかにもファンタジー系の設定だが、
主人公や周囲の人間の描写はかなりリアルに作られており、
世界を救う甘いファンタジー作品ではない。

スプラッタアクションと呼ぶに相応しい、 スリル感とバトル、
そして、倫虫や式神の気持ち悪さがスゴイ。

まったくもって万人にはオススメできないが、
アイアムアヒーロー」等が読めるなら描写は問題ないかと。

ただし画力とは全く別のベクトルにおいて
本作のほうがよりハードに、そしてリアルに主人公が世界と闘っている。

物語自体は打ち切り的な終わり方で、話もどんどん飛んでしまうので、
マニアックな作品が好きな方にしかオススメできないが、
作者「高田築」の次回作があれば、是非また読みたい。
そんな期待感を持たさせる作品である。

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一路平安!

中国人ヒロインと自転車旅ラブコメという、
なかなか斬新な設定だったが、
全2冊で終わってしまった本作。

作者「小林尽」は、スクラン以降
どうにもヒット作品に恵まれない。

確かに元々ストーリー漫画で売れたわけではないのだが、
キャラクターの造形や可愛らしさでは、
一世を風靡したはずのこの作者に、
次の作品が産まれないのはなぜなのか。

この作品も、面白そうな見どころも多少あるのだが、
なんとなく淡々と終わってしまっている。

せっかくの自転車旅という面白い設定が
もう少し物語に反映する良かったのだが、
大きな山場がなく終わってしまったのは残念だった。

作者の描くヒロインが好きな方は読んでみてもよいかもしれない。

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一路平安!(1) (講談社コミックス)

一路平安!(1) (講談社コミックス)

 

 

 

一路平安!(2) (講談社コミックス)

一路平安!(2) (講談社コミックス)

 

 

少年の国

数少ない宗教マンガの傑作として、
語られる事の多かった本作「少年の国」


宗教等少しも信じていなかった、
不良少年「上杉」の存在を通して、
読者は、人が宗教に染まっていく
心理と狂気を体験できる仕掛けになっている。


作者「井浦秀夫」得意の冷静な視線と、
高い人間観察力や論理構成力がなければ
実現できなかったであろう傑作である。


オウム真理教の事件発生3年前に
事件を預言したと語られる事もある本作だが、
その方向だけで賞賛されるのは、いかがなものか。

本作の素晴らしさは、
時代を先取りした先見性だけではない。


ごく当たり前の若者が、自分たちの理想を追い求め、
そして、理想を狂信にこじらせ自らの世界を破壊していく様子は、
オウム真理教のような宗教の事件だけに限った事ではなく、
様々な思想による運動全てを含んでいる事象である。

むしろ本作の白眉は、思想活動の渦中にいた人間の、
心の変遷と葛藤を、これほど見事に
マンガの上に再現しきった事である。


文庫版で全2冊。1巻の巻末にはマンガ評論家「呉智英」の
解説もついており、併せて読む事で本作の持つ
本質的な面白さを理解できるだろう。

宗教を舞台にしたジャンルのマンガは徐々に増えつつあるが、
宗教という思想行為の本質に迫ろうとしている作品は少なく、
本作の知名度が下がっているのは見過ごせない事態だ。

これを読まずに宗教マンガを語ることはできない、
必読の名作の一つである。

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少年の国 : 1 (アクションコミックス)
 
少年の国 : 2 (アクションコミックス)