土田世紀作品の中でも、
未読だった本作を古本屋で購入。
あらすじからして重い話だとは思っていたが、
上下巻を通して読むと心底重たい。
幸せの絶頂を迎えるはずだった二人が、
癌との闘病生活を始める事になる展開に始まって、
これでもか、というくらい困難が襲いかかる。
それでも、生きる事に希望を見出そうとする主人公の姿に、
作者はすがるような気持ちで「生きる」意味を託そうとしている事が伝わってくる。
本作で描かれる、全てのいのちがつながっているという概念は、
「同じ月を見ている」でも語られているテーマであり、
本人の死生観ともいえる思想だったのだろう。
晩年の病床にあった作者は、この作品を振り返ったのだろうか。
そんな事を考えさせられる物語である。
単行本のカバーに、作者の本作にこめる思いが描かれているのも、
作品解説のようで良い味をだしている。
シリアスな人間ドラマが読みたい方にオススメしたい。