つれづれマンガ日記 改

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釣りキチ三平

物凄く久しぶりに釣りキチ三平を再読。

作品発表が1973年と恐ろしく古い作品だが、
その後約50年、「釣り」というテーマを描かせたら、
この作品を超えるマンガはついに現れなかった。

というか、この作品があるから「釣り」ジャンルの漫画は
もう書かなくて良い、と世の中のマンガ家は感じたのだろう。

そのくらい、様々な魚を釣りまくった、
まさに釣りキチの名に相応しい作品である。

作者「矢口高雄」自身も本物の釣りキチで、
10年間65冊の連載の中で、自身が釣っていない魚は、
アカメとムツゴロウの2種類だけというのだから凄い。

そんな本作の最大の弱点は何かといえば、
間違いなく、紙のマンガの構成に失敗してしまった点である。

KCコミックス版と呼ばれる全65冊+特別篇のオリジナル版が
正しい時間軸で本作を収録していたのに対して、
何を思ったか、その後に発売される事になった、
KCスペシャル版39冊セットや、文庫版セットは、
魚の種類別や、海釣り、川釣りといったジャンル別に作品を収録し、
マンガとしての時間軸の流れを壊してしまったのである。
しかも、オリジナル版は絶版にするという余計なおまけつきである。

結果として釣りキチ三平は、プレミア価格の存在となり
逆にその後の読者を減らす流れになってしまったのだった。

確かに多少順番を入れ替えても読める美味しんぼ型の作品ではあるのだが、
キャラクターの絵や、時間と共に進む関係性等、
構成を壊してしまったせいでマンガとしての面白さが台無しになっているのである。

正直、提案した編集部は無能としか言いようがないが、
KCスペシャル版のあとがきを読む限り作者も賛成しているので、
仕方ない事なのだろう。

ただ、昨今Kindleのおかげで、ついにオリジナル版が読める時代になったようなので、
未読の方にはせめて、20巻のイトウの原野あたりまでは目を通してほしい。

魚と自然の世界の描写は、
今なお、全てのマンガ家がお手本にして良いレベルの偉大な作品である。

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