つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

おせん

漫画界には8割の手塚派と2割の水木派がいる、
との名言を残した水木派の作者「きくち正太」の代表作である。

老舗料亭の若女将「おせん」は、
普段は酒ばかり飲んでいるが、
書道・陶芸と幅広い芸術の腕を持ち、
特に料理の腕前は天才的という看板女将。

そんな主人公を中心に、 日本の伝統文化から、
食の薀蓄まで幅広く抑えた本作は、
その後の「きくち正太」というマンガ家の
方向性を決定づけたともいえる作品だろう。

本作自体は全16冊で終了した後に、
「おせん 真っ当を受け継ぎ繋ぐ」
の第二部に続いているわけだが、その原因は
テレビドラマ化の結果に絶望した作者が
創作をやめてしまったという背景なので、
一部と二部に作品上の違いはない。

このあたりは、作者の職人気質を感じさせられる逸話である。

日本の伝統や美食といった世界を美しい画力で彩る本作は、
昨今乱立するグルメ系マンガとは、一線を画す傑作である。


f:id:mangadake:20170914102509p:plain