近年のエッセイ系作品としては、
「ナガサレール イエタテール」
と双璧をなす名作。
35歳のマンガ家アシスタント「武田一義」が、
突然宣告された睾丸癌。
そして始まる闘病生活。
近年のマンガランキングで
よくランクインしていたエッセイ系の作品は、
悲劇というより狂気に近い状況の作品が多かったが、
本作は、自身の身に起きた出来事に
適度な距離と感性をもって
マンガ化に成功している点を称賛したい。
「人間仮免中」ほど歪むわけでもなく、
「失踪日記」ほど笑い飛ばすわけでもなく。
ただ、誠実に自身の身に起きた闘病生活と、
日々への洞察を描いた傑作。
これは、35歳という、
人生の一つの節目の時期に起きたからこそ、
描けた感性なのかもしれない。
表紙カバー裏にも、嬉しい書下ろしが
2Pついており、こちらも素晴らしい出来。
「武田一義」は病気の後遺症で、
昔のような線が描けなくなっているが、
それすらも克服したこの作風に、
命の持つ可能性を感じさせられる。
是非買って読んでほしい、
価値のある作品である。