つれづれマンガ日記 改

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MASTERキートン Reマスター

年末なので、あの偉大なる作品の続編の話を。

発売から随分とレビューまでに時間がかかったのは、
本作に対する違和感の正体が
長い間わからなかったからでもある。

改めて時間をおいて、
本編から通しで読んでみた結論だが、
やはり本作の存在は「蛇足」だったという思いに至った。

MASTERキートン本編の成功は、
序盤のプロフェッショナルな知識に裏付けされたプロットと、
後半のミステリー形式のストーリーテリングという、
原作者に翻弄された2軸の物語を、
キートンという人生に迷うキャラクターが
見事に生き延びた点にあると感じている。

序盤から中盤の素晴らしさは語るまでもないが、
最終巻のドナウ文明の起源を辿る長編においても、
本当に良い意味で浦沢作品の持つ、
ストーリーテリングの才能が発揮され、
それ故に万感のラストを迎えているのである。

それと比較すると本作はどうだろうか。

プロフェッショナルな知識を
巧みに物語の中に展開させていたあの手腕は衰え、
無駄に教養をひけらかす事により、
読みづらく、読者が物語に入り込みにくい弊害にすらなっている。

ミステリー形式の作品は、
昨今の浦沢作品そのもので、
視点とキャラクターを複雑に交差させて、
主人公に強引に神の視点で謎解きをさせてしまう。

また、フォークランド紛争
最終話に持ってくるあたりも残念至極である。

親子の明るい旅立ちの笑顔を
ラストに持ってくることもできたはずなのに、
あの話を巻末に持ってくることで、
作品に無駄なアイロニーと含みを持たせようとする魂胆が良く見える。

素直にハッピーエンドが描けない、
昨今の浦沢作品そのものである。

この続編を高く評価する人も多いようだが、
本編が与えてくれたあの感動を、
この作品が本当に持っているのか。

作者のネームバリューに惑わされずに、
よく考えてみて頂きたいものだ。

ちなみに久しぶりに読み返した本編は最高であった。

 

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やはりMASTERキートンはマンガ界の至宝である。


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