「大島弓子」の定番の作品。
主人公の「チビ猫」は、
可愛い子猫。
けれども、その容姿は、
マンガの世界では少女の姿をしており、
彼女の視点を通して、世界は物語られる。
最初に読んだときは、
「我輩は猫である」かと思ってしまった。
けれども、よくよく読んでみると
両者は大きく違う。
「我輩・・・」は、
猫があたかも人間のように
考え、振舞う事の妙味が
面白さの源泉にある。
本作は間逆である。
主人公の「チビ猫」は、
人間の世界を覗き、
人間のように振舞っているつもりだが、
その実、彼女の動きや愛らしさは、
「猫」そのものである。
そして、その世界は、
「少女の夢の世界」ともいえる。
「チビ猫」の目を通して覗いた幻想的な世界と、
「少女」の目を通して覗いた夢の世界が、
これほどまでにシンクロする事を、
作者がどこまで想定して
描かれた作品なのかはわからない。
ただ、その妙味があったからこそ、
本作は長らく少女達の間で、
愛され続けてきたといえる。
大島作品が持つこの辺りの「少女感覚」は、
やはり頭一つ抜けている印象があり、
男女の感覚差が変わった現代となっては、
もはや類似した作品は登場しないであろう。
惜しむらくは、序盤の面白さに比べると、
中後期は多少その勢いが落ちるところだろうか。
しかし、目を通すべき古典名作の一つである。