樹なつみ作品はどれも面白いが、
個人的に挙げさせてもらえば、
やはり本作をお勧めしたい。
残念ながら「樹なつみ」は
レビュー泣かせのマンガ家だ。
その独自の世界観と設定により
類似した作品が少ないので、
説明が大変難しい為だ。
しかし、それにしても
本作の構成は見事。
大国の王子と、場末のクラブの女性の
ローマの休日を模した出会い。
そして、その時に密かに宿ってしまった
王家の血を引いた末裔。
そんな壮大な序章から始まる、
一国の動乱と女子高生の主人公をめぐる物語。
「女子高生」と書くと途端に
二流作品の匂いがしてしまうが、
本作は近年の「女子高生」ジャンルの作品とは全く異なる。
まさに世界を股にかけるといった表現が相応しい冒険譚だ。
ラストの国民への演説は、
数多あるマンガの演説シーンの中でも
屈指の名場面の一つである。
また、そんな骨太な物語を動かしながら、
タイトル「花咲ける青少年」に相応しい
恋愛絵巻も展開する。
これは並大抵の所業ではない。
未読の方は必ず抑えておくべき
90年代屈指の傑作である。
本編だけで十二分に完成している作品なので、
番外にあたる「特別篇」は、評価外としている。