ネウロの時代はまだ、
フロック的な存在に感じられた
「松井優征」だが、本作の完結をもって、
名実ともに、ジャンプの時代を築いた一人となった。
生徒が先生を殺す暗殺者という、
キャッチーな導入に始まった本作が、
どのような結末を迎えるのか楽しみに読んでいたが、
見事な大団円と言えよう。
「暗殺」という殺伐とした、
およそ青少年に健全な影響を与える気がしないキーワードを元に、
これだけの教育的な作品を創り上げたのは、
偏に、作者の執念と感性のバランスによるものである。
異常をテーマにした作品を描く作者の多くは、
その奇譚とは裏腹に、心の中に均衡する秤を持っており、
それ故に異端の作品が描ける。
しかし、作品中にその秤が出てくる事は稀である。
本作の成功の原因を挙げるならば、
バランスを取らなければ
「少年誌としてのエンターテイメント」
が成立しない事を見抜いていた
作者の慧眼によるところが大きい。
独りよがりのバトルロワイヤルは、
昨今どこにでも転がっており、
それだけでやっていけるほど、
少年ジャンプの看板は甘くはない。
その辺りは最終巻の「あとがき」に
書かれているので読む事をオススメする。
また、もう一つ評価すべき点は20巻前後という
少年誌のベストのタイミングで完結させている点だろう。
作品の長期化から読者が得られるものは、もうあまりない。
そんな道標となってほしい2010年代の名作であった。