つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

鋼の錬金術師

長きに渡って、ガンガンを支えてきた不動の名作。

錬金術は等価交換」

この言葉を元に作者はどれほどの妄想を
物語に盛り込んだことか。
その想像力には恐れ入るしかない。

最後の最後まで、作者はこのルールを破らなかった。
素晴らしい事だ。


たった一つのシンプルな設定が、
物語の根幹を支えて
名作に育つという展開は非常によくある。

これは、作品のプロットが
シンプルで力強いという事を物語っている。


作者荒川弘は女性マンガ家だが、
このシンプルで力強い設定に沿って描けたのは、
女性マンガ家ならではの偉業だったのではないだろうか。

とかく男性マンガ家にファンタジー作品を描かせると
マニア色が強く出すぎる傾向がある。
無論、その精緻な設定に愛着を感じるファンがいるのは認めるが、
それだと多くの読者に愛される作品には成長しない。

本作も、男性マンガ家であれば「錬金術」という設定に拘り過ぎて、
大筋のストーリー性を損ねた可能性がある。

実際に、本作が世に広く知れ渡るようになってからは、
ネットでは「錬金術は等価交換ではない」といった批評すら
見受けられるようになった。バカバカしい話だ。

錬金術は等価交換」

このシンプルさがどれほど読者の裾野を広げていることか。
マンガをエンターテイメントと位置づけるなら
そのシンプルさを手放すべきではない。

 
もはや多くの読者に知れ渡っているので説明不要の本作ではあるが、

蛇足ながら最後にあらすじを。

かつて、母親を蘇らせるために禁断の錬金術に手を出した兄弟は、
その代償として身体を失う。兄は左足と右腕を。弟は身体の全てを失い、
鉄の鎧にその魂を憑依させて生きる事になる。
自らの犯した罪による代償を取り戻すべく、
彼らは長い旅路に向かう。

27冊付き合って是非その結末をご覧になって頂きたい作品だ。

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