というわけで、「山本さほ」作品が三連続である。
まさか、この作者の作品を三冊同時発売する日が来るとは。
エッセーというフィールドを生業とする作者が、
フィクション作品を描くとどうなるのか、
というのはある意味、永遠のテーマなわけだが、
本作は序盤としては悪くない始まりだった。
あらすじてきには、小学校時代を舞台に、
悪い事をすると白い謎の生物がじっと見てくるという
不思議なフィクションだが、今のところ作者の持ち味が活きている。
その要因が、物語を90年代の小学生という
舞台に設定したからだろう。
これによって、物語が半ば自分自身の過去の生活を描けば良いので、
結果として作者得意のエッセーの領域になり、
良質なフィクション作品が描けているという仕組みである。
この辺り、自分の腕前を分かっていて非常に策士である。
あとは、少し不思議なこの物語をどのように着地させるか次第なので、
続きをのんびり待つことにしたい。