総合評価・・・4.02
青春作品の王者、「吉田聡」が描く大傑作。
著作の中では知名度は低いかもしれないが、
個人的には1,2を争う名作だと考えており、
何度読み返しても泣かされてしまう素晴らしい作品である。
過去、甲子園決勝戦でエラーを犯した
トラウマを引きずる浪人学生「ラッキュー」。
そんなラッキューの前に
突如現れた謎の大男「コッセツ」
なんでも屋を名乗るその男と、
子供の喧嘩に巻き込まれてみたり、
お婆さんの埋蔵金探しを手伝ったり、
そんな何の儲けにもならない人助けを繰り返すうちに、
ラッキューは、次第に過去の自分のトラウマと、
また「コッセツ」の過去と向き合うことになる。
これでもか、という程の熱い物語を無駄なく詰めて
全4冊(文庫版は3冊)で完結している本作は、
まさに青春作品の王道だ。
精一杯自分の感じるままに生きることで、
自分の探している何かを見つけ出す。
「自分探し」等というモラトリアムな単語が存在しなかった80年代に、
既に、若者の悩み方を具現化していたその力量に、
青春の巨匠の底力を見せられた気がした。
「なんでも屋は素晴らしいですよ。
僕は、あいつとつきあってきて、それだけは知ってます」
本作を読んだ読者は、必ずこのラッキューのセリフに共感できるだろう。
傑作だ。