中学時代に野球部に全力を傾けた主人公「長嶋晴菜」は、
高校生になったら素敵な彼氏を作って
幸せな毎日を送るべく恋愛の高校デビューを目指すのだが。。。
物語の導入部で、主人公が何かの舞台にデビューする
という展開は昔からあるテーマである。
基本的には人間は変身願望がある為、
この手の導入は多くの読者に受け入れられやすい。
ただし、難しいのは導入以降である。
大きな変化を伴う分だけ、
主人公にはその変化を乗り越える努力や才能や
キャラクター性が不可欠となり、
そのバックボーンが不十分な作品は、
読者に不満を感じさせ、物語の破綻を引き起こすのだ。
その点において、部活少女を
恋愛にデビューさせたという点は白眉だった。
恋愛に巻き込ませたのではなく
恋愛に自分からデビューさせた点が素晴らしいのだ。
恋愛にデビューする、という部分だけを見ると
あまり作品から漂う雰囲気は良くない。
あまりにも恋愛にガツガツしている主人公は
魅力的に作れないからだ。
けれども、本作はその「恋愛にガツガツする」という要素を
「部活少女が目標に向かって努力する」
という構成にすり返ることで、
この問題を解決している。
この設定は想像以上に見事だった。
「先生!」の頃の主人公とは百八十度違う雰囲気の、
明るく何事にも前向きで
諦めることを知らない部活少女が巻き起こすラブコメディ。
男性でも女性でも楽しめる傑作である。