山本周五郎の原作小説「ちいさこべ」を元に、
鬼才「望月ミネタロウ」がコミカライズした本作。
原作は時代小説となっているが、
本作はそれを現代版にアレンジして再構築した作品なのだが、
このクオリティが何とも素晴らしい出来栄えである。
特に望月作品の持つ、独特の間や、アングルといった部分が秀逸で、
あだち充作品の、「絵と物語に余白を創るスタイル」とは別の、
描写のアングルと時間にこだわった展開が、シンプルなストーリーに
素晴らしいディテールと味を加えている。
登場キャラクターも非常に魅力的に描かれており、
どのキャラクターも、望月作品らしい不器用さを兼ね備えている。
そして、作者の最大の弱点である物語の簡潔さを原作小説が補完しており、
綺麗に全4冊で完結している点も高く評価したい。
義理と人情が失われつつある今の時代にこそ是非読んでほしい、
まさに「粋」と呼ぶに相応しい下町物語である。
ちなみに、原作小説との違いは以下に詳しいので、
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『ちいさこべえ』~望月ミネタロウが山本周五郎の『ちいさこべ』に“え”を加えた魅力~ - シネマテーク備忘装置