引き続き「土田世紀」
本作のテーマはまさに、作者が敬愛する宮沢賢治の作品
「雨ニモマケズ」だといえるだろう。
田舎の山奥で貧乏な暮らしをしながらも、
誠実さや純粋さといった現代社会では失われた感性を持ち続ける
主人公「ドンちゃん」
東京から転校してきてドンちゃんと友人になるが、
徐々に彼の純粋さをうとましく思い始める
幼馴染の友人「てっちゃん」
そして、二人の運命を変えていく事になる
一人の女性「エミ」
子供の頃は純粋に遊んでいた三人が、
ある事件をきっかけにすれ違い、そして。。。
あらすじだけだと、単なる三角関係の恋愛に見えてしまうが、
無論、土田世紀がそんなつまらない作品を描くわけもなく、
作者が信じる人間としての在り方を、
これでもか、と突き詰めてくるヒューマンドラマの傑作である。
唯一の欠点は、主人公「ドンちゃん」があまりにも純粋で、
ある種、作者の願望とも呼べるような
孤高の存在として描かれ過ぎている点だろうか。
そんな土田世紀が憧れ続けた「愚鈍でも誠実に生きる」
というテーマを描いた本作を、未読の大人の方に是非オススメしたい。