現在のように引き伸ばしてばかりの作品を
描いていない頃の「福本伸行」原作による
ショートサスペンスのお手本のような本作。
余命半年を宣告された、家庭を省みなかったサラリーマンの主人公。
自殺を考えた彼に届いた警察からの一本の電話は、
14年前に失踪した娘の死体が見つかったという連絡だった。
犯人の時効と自分の寿命という残り半年の時間ををかけた全3冊の追走劇は、
クライマックスまで見事なテンションを保って綺麗に完結している。
連載当時はその勢いに飲まれて細かな点は気にしなかったが、
改めて読み返してみると、序盤の展開にはなかなか強引な部分もあった。
しかし、その辺りを全て塗りつぶしているのが
巨匠「かわぐちかいじ」の劇画力という腕力である。
構成とトリックの根底に福本作品らしさがあり、
そのリアリティをかわぐちかいじの画力で補うのだから面白くないわけがない。
サスペンス作品が好きな方は是非目を通しておくべき名作だろう。