つれづれマンガ日記 改

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黒子のバスケ

女性ファンに支えられた作品と思われがちの本作だが、
SLAM DUNKという伝説のバスケ作品を連載したジャンプで、
バスケマンガをヒットさせたというだけでも、
作者「藤巻忠俊」はもっと評価されて良いだろう。

作品としては、能力バスケットマンガとも呼べる、
ある意味80年代の初期に流行したタイプの作品で、
その点でリアル路線を追求したSLAM DUNKの影響を逃れた点は成功だった。

そして、キセキの世代と呼ばれるキャラクター群の配置も絶妙で、
非常に良い意味で少年マンガ的な作品なのである。

ただ、そこまでであれば今の時代には凡庸な作品だったが、
圧倒的に巧かったのが、物語の構成力である。


本作と比較したいのは「アイシールド21」である。

序盤の圧倒的な面白さで読者を驚愕させたあの作品が、
ライバルとの試合展開の組み方を失敗した結果、
全37冊を通して読んだ時の読後感が今一つなのに対して、
黒子のバスケは全30巻の試合展開と構成が完璧だった。

これは素直に凄い。


当初設定された6人の帝光中学メンバーとの出会いは、
練習試合で登場したコピー能力を使う黄瀬との試合に始まり、
本作の方向性を決定づけた外さないシューター緑間との試合。
その後、最高のライバルとして物語に君臨し続ける青峰の登場と敗北。

そして、登場人物が出そろうウィンターカップ編と、
最後までカリスマを保ち続けるキセキの世代の主将「赤司」の登場。
ここまでで既に13冊である。

ライバルキャラクターを最初に設定して、
徐々に闘っていくマンガというのは少なからず存在するが、
全30冊のうち13冊目まで最強の敵が顔すら出てこない作品は少なく、
物語の運び方が見事に成功している事を示している。

唯一難点をあげるとすれば、紫原の能力とキャラクターが
他のメンバーに比べて薄かったことだが、
それでも赤司・青峰あたりのキャラの存在感は抜群で、
結果として最後まで勢いを失わず、本作は完結するのである。

スポーツジャンル作品は、キャラクターの魅力と、
優勝までのトーナメント展開が全てだという事を証明している
お手本のような作品だろう。

当初の画力は悲惨なものだったが、
連載が続くにつれて、その点は向上する。
しかし、キャラの魅力と物語の展開は、
あとから巻き直すことはできない。

そんな、マンガの原理原則を教えてくれるような作品だった。
読まず嫌いをしている人にオススメしたい。

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