原作「毛利甚八」、作画「魚戸おさむ」コンビと言えば、
この作品しかないだろう。
家庭裁判所に勤める裁判官「桑田義雄」を主人公に据えた、
本格的な司法ドラマの傑作だが、これほど地味な主人公も珍しい。
植物を愛する穏やかな人柄で、温和な口調で青少年に語りかけるが、
時に厳しい現実も伝え、社会で生きていく事の意味を教える。
その姿はまさに植物を愛し栽培するのと同様に、
人間にも同様の愛情を注ぎ育てる、故に、「家裁」ではなく「家栽の人」なのである。
作中では数々の名台詞が飛び出すわけだが、
個人的に一際記憶に残るシーンは第3巻「イチジク」に収録される
以下のシーンだろう。
「どんなに長い処分を与えても、少年は社会に戻ってくるんです。
誰かの隣に住むんですよ。
その時・・・その少年が、笑って暮らしている可能性を探すのが、
裁判官の仕事じゃないんですか。」
未読の方は、この話だけでも是非一度目を通してほしいものだ。
青少年犯罪というジャンルに対して考えるきっかけを与えてくれる名作である。