つれづれマンガ日記 改

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男おいどん

貧乏マンガの原点と言われる本作は、
作者「松本零士」の出世作でもある。

文庫版最終巻のあとがきでも語られているが、
自身の体験した貧乏な時代の鬱屈とした感情を作中で描く事で、
当時の若者から絶大な支持を得た本作だが、
流石に作品発表から50年ほどが経過してしまっている為、
現代の人間が読んでも、なかなかにこの悲惨さは伝わりづらいだろう。
そもそも下宿という概念すら怪しくなっていると思われる。

また「男」おいどんと名乗るだけあって、
男たるもの、男とは、といった部分も非常に多く、
当時としては当たり前の感覚だったジェンダー文化が、
現代では変わってきつつある事も感じられて面白い。

作品構成としては序盤から中盤こそは面白いものの、
松本作品らしいマンネリパターンの繰り返しとなってしまい、
最終話は何ともいえない終わり方を迎えている点はいただけない。

あとがきで、最終話の意味が語られている点だけがやや救いだが、
あとがきがないと、作品としては投げっぱなしと思われて仕方がない結末である。

ともあれ、古い時代の作品の中には、現代でも通用する作品と、
時代が変わり過ぎて通用しない作品があるわけだが、
残念ながらこの作品は後者寄りに感じてしまった。
それぐらい、今の世の中から眺めると、
主人公「大山昇太」の行動は滑稽でもある。

スマートさが全くない泥臭さは、
知識が蔓延している現代社会では
理解しがたい存在なのかもしれない。

今の時代に読み返すのであれば、
恐らく「大東京ビンボー生活マニュアル」
あたりが限界なのだろう。

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男おいどん 9 (マガジンKC)

男おいどん 9 (マガジンKC)