長編ファンタジーというジャンルが、
少年マンガの十八番と信じて疑わなかった当時の私を
木っ端みじんに打ち砕いてくれた、衝撃的な作品。
少女マンガでありながら、長編大河浪漫の頂点に立つ物語、
それが「田村由美」の大傑作「BASARA」である。
改めて読み返してみても、圧倒的に惹き込まれる完璧な第一話。
そして、衝撃的な赤の王と主人公「更紗」の出会い。
既にこの時点で、その後9年も続くことになる
冒険の土台は組みあがっているのだから凄まじい。
また、数多の登場キャラクターにおいても、捨てキャラは存在せず、
各種エピソードにも無理がなく、現在の無駄な長期連載作品に
爪の垢を煎じて飲ませたいような作品である。
加えて、未来の日本という設定の使い方も抜群で、
下手に凝った設定を加えないことで、
ファンタジー作品にありがちな
地名や文化が覚えられない問題を回避している。
以上のように褒めればきりがない作品だが、
本作が最も優れていたのは、やはり、
恋愛と冒険という、二兎を本気で追いかけた点ではないだろうか。
それまで多くのマンガが、どちらか片方だけを追いかけていた中で、
この作品は初めて、2つのテーマが両立できることを証明したのである。
文庫版5巻の「近藤史恵」の解説が、最も的確にそれを説明しているので、
今回のレビューは、その言葉で締めくくりたい。
少女にだって戦いの物語は必要だ。
けれども、かっこいい男の子に恋することもやめる必要はない。
どちらかひとつなんて、いったいだれが決めたのだろう。
欲しいのは両方だ。
少女マンガの歴史に残る金字塔である。
BASARA バサラ文庫版 全16巻完結セット (小学館文庫)
- 作者: 田村由美
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/03/01
- メディア: 文庫
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