ゲーテのファウストに3度取り組んだ手塚治虫の最期の作品。
そして、大変残念なことに未完の遺作。
孤独な学者一ノ関教授は、
人生の真理を探り当てるために悪魔と契約を交わす。
あの有名なセリフ「時よ止まれおまえは美しい」
と言った瞬間に、魂を悪魔に引き渡す契約を。
悪魔の力で若返り、世界中の快楽を手にする人生を再び始めた彼は。。。
最初に読んだのは、今より20年近く昔になるのだろうか。
よくわからないが、とても面白かった覚えがある。
しかし、この魅力的なあらすじの本作が、
未完というのはあまりも厳しい現実だった。
当時未完と知らずに読み始めた私は、
読み終えた後に思わず呻いてしまった。
今改めて読み返してみると、
20年前の自分に面白さが理解できるはずもない、と思えてしまう。
それぐらい本作のテーマは深い。
20年の時を経た、
どちらの自分が読んでも面白いと思わされるのだから恐ろしいものだ。
ゲーテのファウストがベースにある為、
その点はオリジナリティが不足していると思われるかもしれないが、
本作は手塚得意のSFの世界観も含めて十分に練り直されており、
昨今の、オリジナル作品を漫画化している代物とは
完全に一線を画している点は保証したい。
無論、マンガの神様がそんなつまらない作品を作るはずもないわけだが。
ゲーテが自分の人生をかけてファウストを完成させたように、
手塚も人生最期に、本作「ネオ・ファウスト」を手がけている。
完結していれば手塚の生涯最高傑作になるはずだったと
言わしめた未完の本作を読むことは果たして幸せなのか、不幸なのか。
私にはその答えはわからない。
この作品のレビューは私には早すぎたと思わされた。