つれづれマンガ日記 改

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ご近所物語

(2012年評)

90年代から2000年代の少女漫画における代表的な作品。
無論、ご存知の方も多いだろう。


以前、「天使なんかじゃない」のレビューの際にも記載したが、
才能あるマンガ家は時代を読む力に長けている。

そして「矢沢あい」が才能ある部類に入る
マンガ家だという事は言うまでも無く、
本作でもその力が十分に発揮されている。

主人公、幸田実果子と山口ツトムはご近所の幼馴染である。
使い古されたこの設定を作者は確実に狙って作品作りをしている。

80年代であれば斬新さに欠けた「ご近所の幼馴染」は、
90年代後半にも入ると、もはや古典の中の物語だった。

だからこそ作者は、この設定に注目したのだろう。
この設定は本作において、2つの意味で使い勝手がよかったのだ。

一つは、古典であるが故に、多くの読者に愛されているという点。
そして、本作のラストとの相性である。


女性が男性に幸せにしてもらう、
そんな少女マンガの王道ハッピーエンドの時代が終わりを告げ、
自分の才能と力を持って世の中に立ち向かっていく、
そんな2000年代の女性像を予見しているかのような最終章。


親しみやすい王道復古の設定で読者の裾野を広げ、
次世代を予見したエピローグで読者の心を掴む作品。

その作品構成力は恐ろしいほど巧みだ。

加えて、絵柄も「天ない」時代に比べて、
さらに時代の雰囲気に合わせている。

現在の少女漫画界において、1,2を争う天才作家の名は、
やはり伊達ではないのだ、と改めて思わされる作品だ。

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ご近所物語 完全版 全4巻 完結セット (愛蔵版コミックス)

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