評価が難しい作品である事は間違いないが、
個人的には、あまり楽しめなかった。残念である。
作者の「高野文子」は、
ガロ系派閥の神様のような存在なので、
批判するのはおこがましいし、
実際「黄色い本」等は素晴らしい傑作だと認識している。
ただ、本作は「マンガ」ではないのだ、残念ながら。
また付け加えると、「高野文子」の病的なまでの、
絵を通して物語を読者に伝える癖が、
限界近くまで進んでしまっているのが最後の短編だろう。
ここまで進むと、もはやマンガというよりは、
自然科学の一部になってしまっている。
そして、自然科学とマンガの融合は、まさに本作の趣旨となる、
「詩と科学」の融合なのかもしれない。
ただ、やはりマンガは娯楽という観点からみると、
果たして面白いのかわからない。
実際このレビューも、
難しく書こうと思って書いているつもりはないが、
読み返してみても明らかにマンガのレビューとは思えない。
勿論、作者がマンガ世界の地平線の最先端を
進んでいるのはわかるのだが、それでもやはり、
マンガには娯楽を求めてしまうのが、私個人の感想なのである。
その意味で、高野文子作品未読の方は、
是非、その他の入門作品から入ることをオススメしたい。
作者も断り書きを入れているように、本作はマンガではないのだ。