つれづれマンガ日記 改

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新世紀エヴァンゲリオン

(2015年評)
さて、ついについに漫画版が完結した本作である。
なかなか書評が難しい作品だが、久しぶりに長文で書いてみよう。


全14冊読み終えて、素晴らしかったと言われれば難しい。

これを超える作品はいくらでもあるのでは、
と一瞬、思ってしまった。


しかし、それが誤解であることに
すぐに気づかされる。


それは時がすでに2015年、
つまりエヴァンゲリオンの舞台の時間軸まで
進んでしまったからこそ感じる退屈さなのだ。

 

20年前の第1巻のあとがきで、
庵野秀明は、
「4年間壊れたまま何もできなかった自分の、
 全てが込められています」
と語っている。

結果としてそれから20年。

この作品は新世紀の文字通り、
様々な意味で、日本のエンターテイメントを動かしてしまった。


今となってはどこにでもいる内気な主人公、
ひたすら期待感をあおるミステリーワードの数々、
世界を相手にする少年という、
本当の意味での「セカイ系」作品。

それら全てが、
20年前に比べて色褪せて見えてしまうのは、
仕方のないことなのだ。

それぐらい、本作は既に、
読み手側のエンターテイメント観を
十二分に変えてしまっていたわけだ。


しかし、20年前よりも色褪せずに感じたことが1つある。


それは、当時、あれだけ劇場版のエヴァンゲリオンに感じた、
唐突なラストとその違和感。
それが、14冊のマンガを読み終えた今となっては、
少しも違和感を覚えなかった事に対する
自分自身の心の変化である。


ATフィールドが他者との心の壁であり、
そのせいで人は他者とぶつかり傷つくけれども、
その壁がなければ自分は他人と手をつなぐことすらできない。


どう考えても、このテーマを語りきった時点で、
エヴァンゲリオンは既に完結していたのだ。


今はもう、本作のラストに少しも違和感を感じない。
作品として、完璧なレベルで完結している。


そして、この作品のテーマの重さと素晴らしさを理解するのに、
読者側に必要な時間が、この20年だったのだろう。


その意味で、
この20周年において漫画版が完結した意味は大きい。


改めて、この圧倒的なスケールの作品を楽しんでもらいたい。

できればアニメ版から入ることをオススメするが、
マンガはそれを補完する形でどちらも面白い。


まだ本作を知らない読者は幸せである。

今後100年、
日本のアニメーション界の歴史において、
忘れられることのない「金字塔」なのだから。

 

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