つれづれマンガ日記 改

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竜の学校は山の上

(2012年評)
本作は、それなりに好評なようだが、

あえて辛口なレビューをさせていただく。

一言でいうと、「RPGゲーム世代」に、
星新一の真似事をさせるとこんな作品になるのかなぁ、
といった感想だった。

幻想と現実の錯綜した本作が新しくみえるのは、
題材が新しいからだ。

RPGやファンタジーといった題材を切り口に
現実社会を描いたから目新しいのであって、
SFを切り口に描いていたら、
星新一ショートショートもどきに仕上がっていただろう。

ジャンルとしての新しさはあったが、
似たような作品を今後誰かが描けるか、と問われれば、
間違いなく、描ける、と答えてしまう作品。

二番煎じの真似事が出来る程度のオリジナリティだった。

ただ、良い点をつけるとすれば、
表題作になっている「竜の学校は山の上」だけは、
他の作品より一際深かった。

日本で唯一の「竜学部」がある大学に通うことになった新入生は、
日本社会に役に立たない竜をなんとか役立てるための研究を続ける。

様々な竜の種類から、竜の生態、食用竜の部位、etc

他作品は、「勇者」「魔王」ケンタウロス」等の
RPG世代にはありきたりなキーワードを元に作品を構成していたが、
それらの作品よりも竜に関する造詣が圧倒的に深くリアリティがあった。

視点やプロットの差別化だけではオリジナリティは生まれにくい。
いつの世にも世の中を斜めに見ている人間はいるものだ。

けれども、その上に、存在感のあるキャラクターや、
深い世界観を重ねる事で、作品にオリジナリティが出てくる。
人間観察が得意なタイプのマンガ家が
良作を排出しやすい背景はその点にある。

そこが理解できていれば、
さらに面白い作品を描けるマンガ家になるだろう。

今回のランキングの事は忘れて、
ますます腕を磨いて欲しい。

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竜の学校は山の上 九井諒子作品集

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