ドラゴン桜の大ヒットを見て、
作者「志名坂高次」は何を感じただろうか。
ドラゴン桜の連載より10年近く前に、
受験をテーマにして描かれた作品が本作だ。
志望校に合格できない主人公の前に現れる、
受験合格請負人、「受験の帝王」
その独特の勉強方法から、
受験に挑む心構えまでを完璧に教え込む師匠は、
見事なキャラクターだった。
実際に、ドラゴン桜の中に出た方法と
同様の勉強方を教えているシーンも存在するのだから、
目の付け所は間違っていなかった。
ただし、ドラゴン桜が真面目な受験指導マンガだったのに対し、
本作の狙いはギャグだった。
ニッチジャンルの秀逸なギャグマンガは、
マンガ好きの目には止まったが、
お受験好きな教育ママの目には当然留まらなかった。
大ヒットには裾野の広さが必要
という公式が見事に当てはまっている事例だろう。
では、もしギャグではなく、真面目な受験指導作品であったら、
本作は売れたのか、と問われると、答えは難しい。
本作の連載されていた90年代後半は、
次第にリアル嗜好が出てきてはいるものの、
まだ、それほどのリアリティやドキュメンタリーは求められていなかった。
ゆえに、真面目な受験指導マンガを描いても、
きっと世間には受け入れられなかっただろう。
マンガにはその時代時代に受け入れられるパターンがある。
シリアス寄りの作品が好まれる昨今において、
「凍牌」を連載しているあたりはさすがというべきか。
本作の斬新な主題と、バカバカしさには満点を付けたい。
またギャグマンガ復興の時代には、
この手のバカ作品を描いて欲しいものだ。
受験の帝王 第1巻―大学入試 必ずウカる学習法 (月刊マガジンコミックス)
- 作者: 志名坂高次
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/01
- メディア: コミック
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