つれづれマンガ日記 改

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僕らはみんな生きている

これは、「山本直樹」の最高傑作と
呼べるレベルの作品ではないだろうか。

もちろん原作があるので、
全てが作画担当の「山本直樹」の手柄ではないが、
原作とは異なる味わい深いキャラクターといい、
原作者が褒めるラストの演出といい、
作者の才能がそこかしこで冴え渡っている。

また、この作者にしか描けない
ヒロインの魅力が素晴らしい。

やはり、女性の持つ魅力を
紙の上に再現させたら
当代随一の実力者である。

それだけ面白い本作が、
唯一外した点があるとすれば
恐らく時代背景だろう。

本作が発表された90年代前半は、
まだマンガにこのレベルの
現実感は求められていない時代である。


2000年代以降に溢れてくる
漫画にリアリティを求める志向は、
この時代には存在しなかったのである。

それ故に、
アジアの架空の小国
タルメキスタンに赴任した日本の商社マンが、
内戦に巻き込まれ右往左往するという
物語そのものが、マンガの舞台としては早すぎたのだ。


近年の山本作品がひたすら追い求めている
哲学的すぎるテーマと、
初期の「極めてかもしだ」のような作品がもつ
スラップスティックな雰囲気の
中間に位置するという意味においても、
本作は非常に貴重である。

読み始めればページをめくる手を
止められなくなる傑作なので、
大人にオススメしたい漫画として
是非手に取ってほしい作品だ。

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僕らはみんな生きている 上 (ビッグコミックススペシャル)

僕らはみんな生きている 上 (ビッグコミックススペシャル)

 
僕らはみんな生きている 下    ビッグコミックススペシャル

僕らはみんな生きている 下  ビッグコミックススペシャル