もはや書籍版は新品では購入できないかもしれない。
ただ、隠れた名作だ。
天才音楽家モーツァルトが、
実は女性だったという
大胆な設定を舞台に物語は展開するが、
モーツァルトの奔放な精神、作曲群と、
サリエリとの愛憎ともいえる関係性が
この設定故にリアルに浮かびあってくる構成が
抜群の出来栄えである。
そもそも音楽史上
最も華やかであり絶望的でもある
モーツァルトという特出した存在を
違和感なく物語に
抑え込んでいる事を高く評価したい。
ベートーヴェンのマンガを
描けるマンガ家は数多いるだろうが、
得体の知れない鬼才モーツァルトを
描ける作者は、後にも先にも少ないのではないだろうか。
この辺りマンガ界の鬼才として
その名を残した「福山庸治」の
面目躍如といったところだろうか。
作者の作品群の多くは、
不条理に満ちているため、
なかなか読者を選ぶタイプの作者だが、
本作は広くオススメできる名作だろう。