「坂道のアポロン」の
作者「小玉ユキ」が好きなので、
1巻から楽しみに読み続けていた本作も、
全9冊でついに完結である。
富山県富山市八尾地域の
伝統の踊り「おわら」を軸にした
青春活劇だが、
難しいテーマを選んだわりには
安定感が抜群であった。
この辺りの上手さは、
過去に名作を創り上げた腕前が出ている。
「おわら」大好きの主人公「佐伯」
東京から来たのに「おわら」が踊れる
謎の転校生「峰岸蛍子」
そして、彼女の秘密と、少しずつ始まる恋愛感情。
途中少しばかりの波乱を挟みながら
最後まで安定した面白さであった。
しかし、最終9巻の舞台となる
伝統行事「風の盆」だけは、
非常に評価が難しい。
これは、作者の腕の問題ではなく、
マンガと音楽という最高に組み合わせの悪い、
表現世界の限界そのものでもある。
マンガでは音が鳴らない。
その1点をもって、
最後の盛り上がりはやはり
傑作「坂道のアポロン」に軍配をあげたい。
とはいえ、普通に面白い作品なので、
少女マンガ好きは抑えておくべきだろう。