鬼才「水城せとな」が描いた、
非常に評価が難しい作品。
それが、本作「失恋ショコラティエ」である。
長年片思いした女性に
失恋したことをきっかけに、
一流のショコラティエを目指す人生が始まるという
導入は抜群に面白かった。
そして、人妻になった彼女を追う限り、
破滅の予感しかなかった中盤以降、
鬱的な展開を描かせたら天才的な作者が
どんな落としどころを見つけるのか
非常に楽しみにしていた作品でもあった。
しかし、8巻の作者あとがきが語られた辺りから
風向きが変わる。
「数年後、彼女を見かけた。普通の女だった」
そんなラストで終わる映画に
影響を受けたという本作の最終9巻は、
良く悪くも作者の狙い通りに
なんとも平凡なエンディングだったのである。
問題は、そんな本作が、
「水城せとな」作品としては
最も知名度が高いという点だ。
「ダイアモンド・ヘッド」や「放課後保健室」等、
圧倒的に知名度が低いにも関わらず
最高に面白い作品群があるのに、
最も世の中に知れ渡ってしまったのは、
「失恋ショコラティエ」というこの虚しさ。
「失恋ショコラティエ」でしか
「水城せとな」を知らない読者には、
是非、他の作品も体験してほしい。特に前述の2作品は、
絶対オススメしたい傑作である。