久しぶりに「古谷実」に泣かされた。
一世を風靡した「稲中」以来、
創作を模索してきた作者。
「ヒミヅ」以降は、
ひたすら人生からの問いかけを
哲学する事が課題となり、
エンターテイメントとしてのマンガは、
置き去りになっている感もあった。
しかし、本作はやってくれた。
今まで培ってきた、
「笑い」と「人生の苦味」を
見事に混ぜ合わせた大傑作だった。
作品で泣かすことは難しく、
笑わせる事はさらに難しいという
創作者への格言が存在するが、
本作のラストは、
清々しいまでの泣き笑いを
読者に提供してくれる。
まさに感涙必至の最終巻。
やはり人間は本質的に
ハッピーエンドが好きなのだ。
その事を再認識させてくれる
味わい深いラストである。
現時点でのマンガ界において
「古谷実」にしか描けない本作を
作者の集大成として必ず抑えておくべきだろう。