引き続き「高浜寛」である。
ガロ系デビューに相応しい
短編を綴った初期作品集。
海外のベスト・オブ・ショート・ストーリーを
受賞したというのも良くわかる作品で、
芸術性と儚さが多分に含まれた出来栄えである。
しかし、マンガと芸術性というのは、
些か難しい問題で、
過去多くのガロ系作者達が
日本マンガ界において主流たりえたかというと、
残念ながら、それはないわけである。
日本におけるマンガの存在は、
絵画のジャンルには位置しておらず、
結果としてB級エンターテイメントとしての
存在感を維持し続けている。
そして、日本マンガ界で、
芸術的な作品を追えば追うほど、
大衆にその才能が伝わる可能性は
低くなっていくのである。
その意味で、「高浜寛」も
この路線を続けていたら恐らく現在の活躍はなかっただろう。
そして、この才能に、
エンターテイメントでの味付けを加えたからこそ、
近年の作品のクオリティは圧倒的だと感じるのである。
勿論ガロ系の作品を否定するつもりはないのだが、
マンガを良い意味でB級娯楽作品に留まらせる意味では、
エンターテイメントの要素は不可欠であり、
それを描くことで、「高浜寛」という才能が、
世の中に広まっていく事のほうが、
よほどマンガ界にとっては良い影響があると、
私は考えるのである。