つれづれマンガ日記 改

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エマ

好きこそモノの何とやらという言葉がふさわしい
森薫による、大英帝国恋愛絵巻。

ヴィクトリア王朝時代、
身分の違いというヒエラルキーが明確に区切られていた時代に、
貴族の息子とその家の女中の禁じられた恋愛を描く物語。

ストーリー自体は身分違いの恋を演じた、
王道作品だが、本作の見所はやはり
その絵の描き込みの凄さだろう。

劇画時代が終わりを告げて、
キャラクターの線がどんどんデフォルメ化されている現代において、
異様とも言うべき細かさで、森薫は絵を書き込んでいる。

『細かいものを描いているとテンションが上がってくる』
が本人のあとがき談だが、
常人では気が狂いそうな描きこみ振りである。

ページ単価でやっているマンガ家としては
辛くならないのか、と不安に思ってしまうのだが、
本人にしか分からない幸せがあるのだろう。
こういったものをやはり才能と呼ぶべきか。


古くからある身分違いの恋物語は、
この作家の描く世界観の中で、
まさにマンガを越えた絵物語として展開し、
読者を古い時代に引き込むことに成功している。

神は細部に宿る。

この書き込み振りが本作の格調を
1,2段上の作品に押し上げている事はやはり間違いない。
連載中の乙嫁語りも大変素晴らしい。
是非、このスタンスを守って創作を続けて欲しいマンガ家だ。

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エマ  全10巻 完結セット  (Beam comix)

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