つれづれマンガ日記 改

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医龍

世に医者マンガは数多あれど、
この切り口で描かれた作品はなかった。

それが「医龍」である。


主人公「朝田龍太郎」
天才的なオペの手腕を持つ外科医だが、
日本の大学の医局に嫌気が差し、
世界の舞台で活躍していた男。


そして、そんな奔放な男を、
自分の夢=教授の椅子
を手に入れるために、
スカウトにくる女性の助教授「加藤晶」


人を助ける為の医者マンガは
ブラックジャック以降ごまんと溢れたが
医局の政治を描いた作品は無かった。


この視点は慧眼であった。


また、もう一つ見事であった視点は、
物語をチームで展開させた事だ。


天才外科医が登場する医者マンガは、
どうしてもその軸を他の人物に動かすことが難しい。
しかし、本作にはもう一人の主人公がいる。
それが、新人研修医、「伊集院登」だ。


天才的なキャラクターは、
その設定ゆえに事態を打破する局面に活躍する為、
読者に衝撃は与えるが、感動は与えづらい。


これは作品におけるジレンマの一つである。


そして、読者に最も感動を与えるのは、
やはり等身大の人間が成長する姿なのだ。


天才の活躍に、
医局の政治を交えながら、
夢も希望も無かった一人の研修医が
少しずつ自分の
「医者」
としての姿を目指し始める。


そして、その活劇を支える
作者乃木坂太郎の、
描写の技量。

ドラマチックな展開を求めるゆえに
夢物語な部分も多かったが、
マンガとしての面白さがそれを上回った。


それが結実したラストシーン
「やっと医者になったな」は
本作屈指の名場面である。


全25冊
時間を使って読む価値のある名作だ。

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