(2012年評)
「放課後ウインド・オーケストラ」の
宇佐悠一郎の作品ということで手にとって見た。
しかし。。。
まぁ残念ながらだ。
原作未読だが、原作の質は高いと思われる。
何故なら、あまり極端なドラマが起こらないからだ。
昭和20年からスタートする、
淡路島の子供たちの物語。
戦後の日々の中、
彼らが野球というスポーツに
心を魅了され、そして熱中していく物語。
何も特別なことは起こらない。
我々が普段聞き及んでいる程度の、
戦争物語だ。
故に、これだけで物語に成り得ているという事は、
原作者の描写力の高さの裏返しなのだ。
高い描写があればこそ、
大掛かりな物語や舞台装置を作らなくても、
作品として展開していけるのだ。
では、そのレベルの描写力が、今の「宇佐悠一郎」に
あるか、と問われれば残念ながら否である。
学園生活の明るい部分は描けているが、
暗さや深みが全くにじみ出ていない。
推薦の帯を書いている森田まさのりが描いたら、
もっと違う作品になっただろう。
原作の目指す、作品の質と、
マンガ家の描ける技量に差が出てしまった事例である。
メディアミックスはやはり難しい。