つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

童夢

大友克洋の才能を
まざまざと見せ付けられる作品。

昨今の、映像界における氏の評価は別として、
80年代における本作の衝撃は異様だった。


2000年代以降急増する事になる、リアル嗜好の作品の多くが、
文字で薀蓄を語ることで作品の質を高めているのは、
残念ながら本作のような圧倒的な描写力を再現できないからだ。

そのくらい、類を見ない絵の力、
特にカメラワークが凄まじかった。

マンガというのは、その殆どを「絵」で構成されているのだという
原点を改めて思い知らされる作品だ。

 

本作に登場する超常現象には名前がない。
薀蓄も存在しない。

キャラクターの名前すらも重要でなく、
あらすじという意味でも、説明不足の感がある。


しかし、それら全てを消し飛ばすほど、
童夢」は作品として完成している。


「団地」という舞台の憂鬱
「超常現象」の不可思議
「破壊」の戦慄
「死」の恐怖
「結末」への漠然とした不安

それら全てが絵で描かれている。


これだけの才能があれば、
文字の力はいらないのかもしれない。

そう思わされる大傑作だ。


凡そ残念なことに、
この作品を真似できるマンガ家は
一握りもいないだろう。


故に現代のマンガは、
今日もページの中に台詞を敷き詰めるのだ。


マンガ読みは必ず抑えておくべき、
SFアクションの大金字塔である。

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童夢 (アクションコミックス)

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