つれづれマンガ日記 改

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夏のあらし

(2012年評)
スクールランブルで一世を風靡した作者
小林尽」の作品。

スクラン」の世界観とは随分異なり、
現代と戦時中の時間軸を、交差させた物語だが、
作者が自分が描きたいものを描きたいことが
伝わってくる作品である。

ただ、残念な点もある。


作者のキャラクターと絵が、
戦争描写とあまりにもマッチしない点である。


作者は戦争を知らない世代なのに、
戦争の恐怖を描くことに挑戦していて素晴らしい、
という意見が多いようだが、個人的には賛同できない。

残念ながら、わたしは本作からは恐怖は感じられなかった。


小林尽の作品は、とても良い意味でキャラクターが、
二次元マンガとして完成しきっているのだ。


これは、マンガ家にとって非常に重要な才能といってよい。
多くのマンガ家がこの才能が欲しくてたまらないのだ。

だからこそ、スクールランブルは、
マガジンの中において異色の存在ながら
あれだけの成功を果たしたと言える。


裏を返すと、キャラクターに、生命としての泥臭さが少ない。


本作の主人公は、顔つきを不細工に設定することで、
二次元キャラクターからの脱出を図ろうとしているのがわかるが、
それでも、残念ながらまだ不足している。

その事が作者自身もわかっていたのだろう。
後半になるにつれ、過剰な文字による、
戦争の悲惨さを説明するシーンが増えてくる。

しかし、それでは残念ながらマンガではなくなってしまう。


絵と文字で形成される物語を
「マンガとして描ける人」と、
「マンガとして描けない人」。

この違いがどこから来ているのか、私にはわからない。

凡そ多くのマンガ家は、「マンガとして描ける」才能に憧れるのだが、
本作のテーマは、やはり
「マンガとして描けない人」が描いてこそ、
最も成功できるジャンルなのではないだろうか。


小林尽には、小林尽にしか描けない、別の作品がある。

そんな感想を持った作品だった。

その辺りを抜きにすれば、
エンターテイメントとしては、
よくできている良作だと思われる。

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