つれづれマンガ日記 改

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青い車

この手のマンガが少なくなったのは、
やはり90年代と現在では、
マンガ家の置かれる環境が違うからなのか。

そんな事を思わされる、
寡作のマンガ家「よしもとよしとも」の短編集。

表題作「青い車」は、淡々としている。

まるで何事もなかったかのような、
日常のシーンを切り取った短編なのだが、
その中には、非常に多くの情報を詰め込んでいる。

ただ、物語としては、何もなく終わる。

この、「青春時代の言葉にならない空気」
のようなものを、作品の中に再現する方法を、私は知らない。

故にスゴイ作品である。

でも、起承転結のある物語を求める読者にとっては、
全然面白くないマンガでもある。

そこで、最初に戻って、
この手のマンガが減少しつつある背景なのだが、
恐らく90年代と2010年を隔てるネット世界の溝なのだろう。

誰もが言葉にできない青春時代の空気感を、
孤独に一人で心の中にため込んだ人間が
感情を爆発させている風景こそがこの作品の原背景なのに対して、
誰とでもつながりやすく、
押し売りのメディアやミュージックがない現代には、
この感情が少しずつ削られてしまっているのである。


そんな、時代の変化を感じてしまう作品。

以上の理由から、マンガ単体の評価としては普通。
ただし、マンガ読みは、決して読んで損はない。

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青い車 (CUE COMICS)

青い車 (CUE COMICS)