つれづれマンガ日記 改

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はねバド!(14)

 

 

10巻頃から書き続けているはねバド!の新刊レビュー。
新刊はたくさあって面倒なので、よほど面白くないと書かないのだが、
残念ながら毎回こちらの想定を上回る面白さなので、書かざるをえない。


基本的には美少女系ジャンルは趣味ではないので、好きな作品は少ないのだが、
これはもう美少女ジャンルを飛び越えていて、正統バドミントンマンガとして、
しばらく超える作品が出ないのではないだろうか。

さらに褒めると、14巻の試合展開と伏線の回収は独特で、
スポーツ漫画ジャンル全体で見渡しても、ちょっと類を見ないスゴイ展開だった。
というわけで、今回は猛烈にネタバレなので、以下長文注意。








本作の登場人物を振り返ると、コニーは別格として、やはり「益子泪」が
最強のキャラクターとして描かれていた点は異論ないだろう。
メンタル面こそ問題があるものの、本人が負けようと思わない限り負けない。
そんなキャラクターとして描かれていた。

そして、そんな天才を綾乃が打倒できた理由は、
抜群のコントロール力で、偶然見つけた益子の弱点であるボディ周りを
ひたすら打ち込めた、というストーリーだった。
メンタルの弱い選手である側面も描かれていたし、試合描写の迫力も
抜群に上手な作者なので、概ね納得しながら、この展開を楽しんでいた。

そして、試合後に志波姫含む周囲のキャラクターによる会話で、
弱点を見つける状況把握能力こそ、綾乃の武器であるという説明が入ることにより、
打倒王者の展開に、より説得力をつけたわけである。
これはスポーツ漫画における王道的な構成だ。

ところがだ。

今回14巻において、「益子泪」自身が敗因を説明するシーンで、
ボディ周りを狙われた時のクロスファイア
他とは回転数の違う、別のクロスファイアだったという説明を差し込んできたのだ。
そして、それこそが綾乃の奥の手である、と。

これはもう、本当に震えがくるほど凄い事である。


通常、スポーツ作品における試合展開はその一瞬一瞬がドラマティックなので、
予想外の展開や、新しい技が登場すれば、その場で説明が入るのが王道である。

そして、少し構成の巧みなマンガ家の場合は、試合中は違和感だけ残しておき、
試合終了後の振り返りにおいて、その異質さを説明させるという展開になるのである。

基本的に、これ以外の試合構成は見たことがなかった。

今回のはねバドの場合も同様に、益子泪との対決の間は違和感だけを残しておき、
試合後の志波姫のセリフによって、違和感を解消させた、という認識だった。


ところがだ、今回はそのセオリーをさらに超えてきたのである。

益子との闘いで、試合途中でもネタバレせず、試合終了後の振り返りにおいても、
クロスファイアの回転数というポイントには触れさせず、
次戦の志波姫戦の最中において、その点を回収するという展開。

これによって天才の益子が、
「ボディ周りのポイントが狙われ続ける点を修正できないのか」
という疑問にも同時に答えながら、
志波姫戦の展開を盛り上げる作用すらも産んでいるのだ。


あまり褒めるのも悔しいので、どうせ後付だろうと思って読み返したのだが、
クロスファイアの回転数が3パターン以上あるという点は、
立花の口から11巻時点で説明されている事も考えると、
狙って作られた構成である可能性も捨てきれない。

となると、作者「濱田浩輔」は、スポーツ漫画の試合構成として、
今まで描かれた事のない領域の描き方をした事になる。

もはや、続きが気になるというレベルではないほど、
時間が気になるところで14巻は終了しており、またしばらく、
はねバドの新刊を待つ日々になりそうだ。