(2012年評)
藤子・F・不二雄のSF短編作品は、
私が最も愛するマンガの一つである。
そんな氏のSF短編の中でも、
最も異彩を放つのが、
本作に収録されている「未来の想い出」
ではないだろうか。
主人公「納戸理人」は、あたかもF氏を
モデルにしたキャラクター。
描かれる世界も、
本人の人生の葛藤も、
なんとなくF氏自身のものではないだろうかと
思わされる倒錯感。
途中までの緊迫の展開は、
やはりさすがの腕前だった。
しかし、大変惜しむらくかな、
このラストには些か拍子抜けさせられた。
多分、全盛期のF氏であれば、
本作を超える結末を見せてくれたのではないだろうか。
良くも悪くも晩年の作品であった。
誤解のないよう書いておくが、
決して氏の才能を否定するものではない。
F氏は間違いなく掛け値なしの天才だ。
我が家の蔵書の中からベスト5を選べと言われたら、
間違いなく選ばれるのがF氏の「SF短編PERFECT版」である。
そして、F氏の全盛期のSF短編を読まれている方なら、
この「晩年の作品」という表現には賛同頂ける筈だ。
常人には真似できない、
鮮やかなストーリー構成に、
どれだけ感嘆の溜息をつかされた事か。
全盛期のF氏に、本作を描いてほしかったと、
つくづく思わされたわけである。
ちなみにこの作品だけは、
SF短編PERFECT版に収録されていないので、
ファンの方は抑えるべきだろう。
藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出
- 作者: 藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: コミック
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