つれづれマンガ日記 改

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25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ

(2012年評)
「虫と歌 」を読んで次の日即購入。

とりあえず、マンガ読みは市川春子
読んでおかないとまずい。
そんなレベルで断言できる作品の質。

特に表題作
「25時のバカンス」は畢生の出来栄えだ。

前作は独創的という段階であった表現力が、
本作ではそのレベルは既に超えて、
もはや芸術の領域に入りつつある。
またコマ割もより洗練され、
様々な挑戦が行われている事がわかる。
けれどもマンガとしての面白さが
損なわれていない。

これは異常な事だ。

長いマンガの歴史を紐解けば明らかだが、
漫画的面白さと芸術性独創性は、
著しく相性が悪いのは、自明の理であった。

表現力が新しいか、
マンガとして面白いか
マンガ評論の本を読み返してみればわかるが、
そのどちらかでクローズアップされて批評される事が通常なのだ。

しかし、市川春子は違う。
マンガとして面白く、
表現形式として新しさを含有している。

また、虫と花のレビューでも記述したが、
人間とそれ以外の生命体への境界線に関する
倫理観の欠落が素晴らしい。

市川春子を読んでいないマンガ読みは、
危機的な状況にある。急いで読まれたほうが良い。


「天才」
なんとも凡庸な表現だが、そうとしか称せないあたりが、
凡人の批評の限界なのだろう。

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25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)