つれづれマンガ日記 改

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昴 MOON

天才を描かせれば、当代随一の才能を魅せる
曽田正人が描くバレエマンガ。

音や映像が流れないマンガの世界において、
バレエはさぞかし難しいテーマであったが、
その辺りを観客のリアクションと絡めて描ききったのは、
さすがである。

しかし、足りない部分もあった。

本作では、曽田正人は3つの敵と戦う必要があった。

1つは前述の「バレエ」というジャンル自体への挑戦。

2つめは、女性の主人公という点。

そして最後にストーリーの構成である。


マンガには大きな枠組みとして、
「ストーリー構成が完成している作品」とそうでない作品がある。

前者の代表例は、いわゆるスポーツ学園マンガだ。
野球部が甲子園を目指せば、とりあえずマンガにはなる。

曽田正人の作品でいえば、「シャカリキ」や「capeta」がこれにあたる。

もう少しだけ枠組みが少ない作品として、
代表作の「め組の大吾 」がある。

ただ、この作品にしても、主人公が職業人である以上、
描く物語はある程度枠組みがある、といえる。

しかし、本作は別だった。

芸術、というジャンルはいわゆる少年漫画的な
勝った負けたの世界が大変描きにくい。

それは、そのままストーリー構成の作り辛さに跳ね返ってくる。
加えて、女性が主人公のマンガだ。

本作は、主人公「昴」のわがままに振り回される
作中人物達と同様、ストーリー自体も振り回されていた。
そして、それはそのまま作者の苦悩だったのかもしれない。


本作の度重なる連載中断がその証である。


芸術ジャンルの作品は何をゴールに物語を描くべきなのか、
これはマンガに与えられた高いハードルの一つなのだろう。

しかし、バレエという最も難しいジャンルの一つを、
描ききっただけでも十分な偉業であり、
曽田正人の才能を疑うものではない事を付け加えておく。


ちなみに昴までが第一部。MOONが第二部となっている。
未読の方は是非。

曽田正人作品自体が未読の場合はやはり、「め組の大吾 」を
まずはお勧めしたい。

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