つれづれマンガ日記 改

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忍者武芸帳 影丸伝

70年代カテゴリに入れているが、
正確には50年代から60年代の古典に入る作品となる。
白土三平の最高傑作と謳われる本作は、
当時の少年たちの心を掴んで止まなかったのも頷ける大傑作である。

現代のマンガに慣れている人からすれば、
絵は古臭く見えるかもしれないが、
そこに溢れるキャラクターの魅力、
テーマの壮大さ、闘いの緊迫感。
どれをとっても超一流の作品といえるだろう。

様々な忍術や剣術も、昨今の画力一辺倒の表現とは異なり、
史実や説明を上手いタイミングで物語に挟み込む、
この絶妙な白土節にも唸らされる。

確実に、白土派と呼ぶべき、
手塚治虫の流れにないマンガの一つの形が本作には備えられていた。
少しばかり年をとってしまった今の自分が読み返すと、
多少、強引な物語の引きや、無理な展開が見えてしまいそうになるが、
それを補ってあまりあるリアリティが本作にはあった。

本作のテーマの全ては、
ラストの作者の記述に込められている。


「ある個人なり階層に時代が大きな超人的行動を要求する場合もある。」

その体現者が影丸なのだ。

日本人が持つ、いや世界が持つ、「忍者」という存在への憧れは、

本作と白土三平が作ったといっても過言ではない。


我々は遠くから来た、そして遠くへ行くのだ。

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