(2011年評)
石黒正数は昨今の人気マンガ家の一人だが、
個人的には、「それ町」以外の作品、
特に短編集への評価が低い。
故に、最近噂になった「外天楼」も
まだ怖くて手を出せずにいる。
多分、テーマ性といったものを
非常に大事にするタイプの作家なのだろう。
「それ町」は自身の体験と作品が見事にはまり、
テーマ性がうるさく前面に出ずに、
段違いの面白さを見せつけている。
それに比べると、各短編集や、
割と人気の高い「ネムルバカ」等は、
テーマ性を訴える点がどうしても物語のテンポを殺し、
作品自体の面白さが減ってしまっている点が大変残念だ。
そんなこんなで、本作、
「響子と父さん」に恐る恐る手を出してみたが、
大変面白かった。
個人的には今まで読んだ石黒短編では一番面白い。
本人の趣味なのか、SFや非日常を作品に挟みたがるのだが、
やはりこの人は「日常」と「家庭」が一番面白い。
そのジャンルをテーマに描き続ければ、
しばらくは他の追随を許さない存在足りえるだろう。