つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

c3_中編(15冊以内)

俺節

久しぶりに編集王を読み返して、完全に「土田世紀」の世界にやられたので、何作かレビューを。まずは、初期の代表作「俺節」である。この作者の画風で演歌の世界を描くという時点で、既に面白い事は確定しているわけだが、青森の片田舎から、単身上京した主…

幽麗塔

名作「医龍」の作者「乃木坂太郎」が描いた新境地。原案は幾度もリメイクされているミステリーの名作だが、本作はオリジナル路線を行く作品。仕事も金もなく行き場のなかった主人公「天野」があるとき殺人事件に使われた奇妙な時計塔「幽霊塔」に近づくこと…

鉄子の旅

鉄道にはまる女性=「鉄子」を世の中に広めた作品であり、未だに別シリーズのマンガが続いている根強いシリーズの原点ともいえる本作。 鉄道に全く興味がない女性漫画家「キクチナオエ」と、鉄道にしか興味がない人生を過ごす、旅の案内人「横見浩彦」そんな…

憂国のラスプーチン

元外務省の主任分析官であり、ラスプーチンと呼ばれた男「佐藤優」を描いた傑作。 佐藤の逮捕から、最初の判決が出るまでの時間、物語の舞台はただひたすら、取調べの部屋の中のみ。 そこで繰り広げられる、検察とのやり取りと、語られる世界情勢と外交の世…

たそがれたかこ

「入江喜和」ほどスポットライトの当て方が特殊なマンガ家も少ないだろう。最近始まった新連載もそうだが、本作は45歳のヒロインという設定で、非常に地味な主人公の日常を描いている。ただ、地味な主人公が面白くないかというと、マンガとしては全く逆で、…

高台家の人々

ベテラン「森本梢子」の腕が冴え渡る、異色のラブコメ作品。冴えない会社員の主人公「木絵」が、風邪で会社を4日休んでいる間に現れたのは、海外支社帰りのイケメン社員の王子様。 と、ここまでは如何にも王道少女漫画だが、その王子様が実は人の心を読める…

さばげぶっ!

なかよし連載の少女マンガとしては、完全にギリギリのラインを攻めた唯一無二のサバゲーギャグ少女マンガ。この辺りのテーマ選びののセンスは、流石に一度ヒット作を出した「松本ひで吉」だけの事はある。学園内で絶大な人気を誇る「鳳美煌」に無理やりサバ…

さすがの猿飛

今もって傑作を作り続ける巨匠「細野不二彦」の最初期作品。 オデブで女好き、弁当ばかり食べているけど、忍びの腕は超一流の「猿飛肉丸」と、そんな肉丸にベタ惚れしてしまった幼馴染の「魔子ちゃん」の二人を中心に描いた忍者学園ラブコメディ。 どちらか…

クレムリン

唯一無二のシュールギャグ系猫ちゃんマンガ。 そもそも、作者の名前が「カレー沢薫」な時点で唯一無二である。 道端に捨てられていた三匹のロシアンブルーの猫。名前は何故か三匹とも「関羽」。決して世の中に転がっている猫マンガと同じだと思ってはいけな…

エンジェル伝説

後にクレイモアという名作ファンタジーを産み出す作者「八木教広」の初期の学園ギャグ作品である。 天使のように純朴で優しい心を持つ転校生「北野誠一郎」が、その悪魔のような容姿から、周囲の人間からは凶悪人物と誤解され、学校一の不良に崇められていく…

家栽の人

原作「毛利甚八」、作画「魚戸おさむ」コンビと言えば、この作品しかないだろう。家庭裁判所に勤める裁判官「桑田義雄」を主人公に据えた、本格的な司法ドラマの傑作だが、これほど地味な主人公も珍しい。植物を愛する穏やかな人柄で、温和な口調で青少年に…

イリヤッド 入矢堂見聞録

原作「東周斎雅楽」と作画「魚戸おさむ」というベテランコンビが描く、考古学サスペンス作品。「東周斎雅楽」といえば「長崎尚志」の別名義なわけだが、どうにもこの手のサスペンス作品を描かせると、結末の見えない迷宮に入り込むので性質が悪い。そんな中…

はだしのゲン

戦争ジャンルを読みたくなって、はだしのゲンを物凄く久しぶりに再読。子供の頃に読んだ中で最も鮮明に記憶に残る作品であり、現在の戦争や平和や左や右に対して少なからず影響を与えた本作だが、物語の序盤、主人公のゲンが家族を失う体験が、作者「中沢啓…

あれよ星屑

戦後の時代を描いて話題になった本作も全7冊でついに完結である。基本的に戦争ジャンルマンガは、どうしても戦争の悲惨さを描く路線に走りがちである。自身が完全な戦争経験者になる、中沢啓治の「はだしのゲン」や、水木しげるの「総員玉砕せよ!」あたりは…

坂道のアポロン

久しぶりに読み返したが、やはり面白い。ここ近年で最高に好きな作品の一つである。 東京から転校してきた線の細い主人公と、暴れん坊で友人のいないもう一人の主人公。 対極的な二人を中心とする青春の物語は、なぜいつもこれだけ面白い素材になるのか。 特…

ワッハマン

奇妙な日常を描かせると右に出るものはいないマンガ家「あさりよしとお」 1万年もの昔、敵を抹殺するために創られた人造人間ワッハマン。 不死の存在である彼は、しかしそのあまりに長い年月故に自分の敵や使命を忘れてしまっていた。 ギャグマンガに見せか…

図書館戦争 LOVE&WAR

「有川浩」の有名な原作小説をコミカライズした本作。検閲により本が狩られる時代、メディアを規制するメディア良化委員会と、それに対して図書館の自治を守る図書隊の対立という、なかなか突拍子もない設定が、ある意味マンガの世界に非常にマッチしている…

SWEETデリバリー

「鴨居まさね」作品といえば、一般的には「雲の上のキスケさん」辺りが有名だが、私は本作が最高傑作だと思っている。 存在感ある大人を描かせたら当代屈指のマンガ家が、オリジナル・ウェディング制作会社という、世にもロマンティックな仕事を描くというこ…

男おいどん

貧乏マンガの原点と言われる本作は、作者「松本零士」の出世作でもある。文庫版最終巻のあとがきでも語られているが、自身の体験した貧乏な時代の鬱屈とした感情を作中で描く事で、当時の若者から絶大な支持を得た本作だが、流石に作品発表から50年ほどが経…

A・Iが止まらない!

近年のハーレム系ラブコメかつ主人公が受け身という流れは、やはり「赤松健」から始まったのではないだろうか。そして、その根底が作者のデビュー作となった本作である。この作品の何が凄いかというと、「PCから自分の理想の美少女が出てきて取り柄がない自…

ボーイズ・オン・ザ・ラン

ある程度有名なマンガの中でも気をつけなければいけないのが、この「花沢健吾」作品である。最近ではアイアムアヒーローの、投げっぱなしエンドで、多くの読者をショックのどん底に陥れたが、この作者が謎を解かなかったり、読者にカタルシスを与えなかった…

疾風の勇人

近年数少ない政治マンガとしては非常に期待していただけに、本作の終了は残念だった。時代背景的にも池田勇人が活躍した頃は、非常に面白い時代なのだが、残念ながら首相の座に辿り着く前に終了という事で、人気がなかったのか、圧力があったのか、この辺り…

不朽の名作 ~ 藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版

2023年出版のコンプリート・ワークスとの違いは最後に追記 総合評価・・・4.90 年の瀬は名作を、という事で長文である。日本国民にとって不朽の名作を残し続けた藤子先生だが、A氏の最高傑作を「まんが道」とするなら、F氏の最高傑作は本作ではないだろうか…

バロンドリロンド

競馬マンガというジャンルは、作品数が少ないマイナージャンルなのだが、その中でも知名度が低い本作「バロンドリロンド」女性騎手でGⅠを目指すという目の付け所の良さは、流石に、原作「北沢未也」だけの事はある。反面、女性主人公キャラクターの極端な性…

PON!とキマイラ

近年寡作気味になっていた作者「浅野りん」の初期作品。マンガの基礎レベルがとにかく高い作者なのだが、どうにも代表作に恵まれない傾向がある。本作は、空から降ってきた神獣「キマイラ」を、強欲な主人公「八満」が拾った事をきっかけに神獣の巫女が居候…

フリーキック!

まさに粗削りという言葉が相応しい、大ベテラン「原秀則」の初期の秀作。天才サッカー少年の弟と、うだつのあがらない兄というどこかで見たサンデー設定を使って、代表作「ジャストミート」の 二匹目のドジョウを狙った本作だが、連載自体は、短期間で撃沈。…

放課後保健室

物語、絵やデザイン、キャラクター、構成、オリジナリティ全てが圧倒的に高いレベルで完成されていて、一切の隙がなく全10冊で完結する「水城せとな」の、いや2000年以降における最高傑作の一つがこの作品である。この作品ほど面白さに対して知名度が低い作…

小山荘のきらわれ者

今となっては超ベテランとなる「なかじ有紀」の初期作品である。初出が80年代という事もあって、出てくるキャラクターの服装や生活は古く見えるが、登場キャラクターの華やかさと、平和な世界観はここ最近までの作品と比較しても、全く変わっていないところ…

るくるく

不可思議な作品を描かせれば右に出る者のいない、作者「あさりよしとお」による、不条理日常マンガ。突然やってきた悪魔のお姫様「るくるく」と暮らす事になる、平凡な主人公「六文」。ただし、第一話からいきなり父親が惨殺されるという、あさり作品以外で…

O/A オー・エー

鴨川ホルモー以来、久しぶりに読んだ「渡会けいじ」作品である。ホルモーは原作つきで安定した面白さだったが、本作は作者オリジナルなので、色々期待していたが割と普通の作品であった。今でこそ「波よ聞いてくれ」が登場してしまったが、当時の時点でラジ…