つれづれマンガ日記 改

マンガをテーマに、なんとなく感想。レビュー、おすすめ、名作、駄作、etc

c1_全1冊完結

火事場のバカIQ

「榎本俊二」作品といえば、やはり「ムーたち」が最高傑作なのだが、一連の榎本作品の集大成という見方では、本作はなかなか力作ぞろいだ。 得意の下ネタ、不条理、言葉遊び、そして恐怖を見事に交えた傑作短編集になっている。 特に「IQ-005」は秀逸…

Cold apartment

絵本のような可愛らしいキャラクターと、グロテスクなホラーを混ぜ合わせた「財賀アカネ」の初短編集。マンガというよりは、絵が好きな人が書いた物語といった雰囲気で、ストーリーを楽しむというよりは、可愛い絵柄のキャラクターが、殺伐とした血しぶきが…

sunny サニー

作者「今村陽子」による短編作品。事故で両親を亡くした、兄夫婦の娘と同居する事になる主人公と、その娘の生活を描いた作品。絵柄は可愛らしいのだが、その分キャラクター設定はかなりマンガ的で、シリアスなドラマを描くにはいささか物足りない。ここまで…

座敷女

その独特の絵柄と作風で、異端のポジションにいる作者「望月峯太郎」そんな氏の作品群の中でも、異彩を放っているのが本作だろう。 夜中に部屋を訪ねるドアのノックの音がして、ドアをあけると、紙袋を持った大女が立っていて。。。 それまで多くの作品がわ…

晴れゆく空

「谷口ジロー」である。過労死寸前まで働き過ぎた結果、若者と交通事故を起こしてしまった主人公「久保田」。彼が事故から目覚めた時には、彼の意識は交通事故の相手の若者「小野寺」の中に混ざりこんでいた。こんな風に書くと、昨今のライトノベル的なあら…

脂肪という名の服を着て 完全版

これこそ、「安野モヨコ」と呼ぶべき「安野モヨコにしか描けない作品。太っていて気が弱いOL「花沢のこ」は、食べている間だけ、シビアな現実を忘れられる日々。それでも、徐々に日常は壊れ始め、ついに彼女はやせる事を決意する。やせられれば、やせさえす…

ひきだしにテラリウム

(2013年評)しかし、相変わらず残念なことに「九井涼子」と相性が悪い。わりと騒がれる事の多い作者だが、そこまで素晴らしいと思えないのが残念。今回は前2作に比べて、格段に画力の自由さが上がっているのは認める。縛られることなく作品作りが出来てい…

相羽奈美の犬

強烈に感想を描くのが難しい作品。さすが「松田洋子」である。 ヒロイン相羽奈美を追い回すニートの引きこもり主人公が、交通事故に巻き込まれて、結果、犬になり、彼女に飼われる事になる。 ここまででも相当強烈な展開だが、この主人公が人間に噛みつくと…

漫喫漫玉日記 深夜便

もはや、人生そのものがどこに向かっているのかわからない危うさを持つ、桜玉吉の日記シリーズ。 漫画喫茶に籠り続けて描かれた最新作。正直、完全に枯れきっている。 枯れた味わいというような状況を通り越して、枯れきったオジサンの日記になっている。 絵…

オンノジ

主人公のミヤコ一人が存在する不思議な世界。何をすることもない不思議な日常の中で、彼女は町でみつけた何かを「オンノジ」と名付ける事になる。 作者「施川ユウキ」作品独特の、シュールでほのぼのとした世界観と、不意に挟まれる独特の暗さ。 今までの発…

東京アサイラム

定年退職した主人公が、妻とどうしようもない理由で喧嘩をして家出。その後、公園で怪しい男に誘われた先は、3畳一間のボロアパート。まさにタイトルにあるアサイラム=避難所での不思議な生活を描いたシュールな作品。作者「太田基之」は、非常に地味な作風…

ストーリー

近年におけるショートストーリーの名手といえば、やはり「戸田誠二」の名前は挙がるだろう。決して巧いわけではないが、ショートストーリーを描くには欠かせない、幅広いキャラクターの表情と特徴の強すぎない画風。テンポの良いネームと、キレのある構成。…

strawberry shortcakes

「魚喃キリコ」の代表作と呼ばれる本作だが、個人的にもこの作品を推したい。女性の持つ内面世界を、4人の登場人物を通して、これでもかというほど繊細に美しく表現した本作。基本、ショートストーリーの連作ではあるが、少しずつ時間軸が動く中で、変わって…

魚喃キリコ短編集

女子サブカル系マンガ界に君臨する作者の一人「魚喃キリコ」による初期短編集。90年代後半から2000年代前半にかけての作品が収録されているが、面白いのはやはり、その作風の変遷だろう。序盤の収録作品「彼女のことを、いっこだけ」は、感性の部分では作者…

透明人間の恋

「町田くんの世界」で独自の路線を築いている作者「安藤ゆき」の初期短編集。少女マンガによくある恋愛オムニバス形式の作品集だが、キャラクターの持つ躍動感の高さが、その後の活躍を伺わせる。また、作者独特の絵柄や描写が魅力的で、昨今よくある少女マ…

足摺り水族館

不思議な作品を描く作者「panpanya」による、初期短編集。最初に収録されている「完全商店街」が白眉で、これは確実に読む価値のある傑作。 異様なまでに書き込まれた細部と、ぼんやりとした主人公の描画のギャップがたまらなく面白い。そしてその構成は、物…

さよならタマちゃん

近年のエッセイ系作品としては、「ナガサレール イエタテール」と双璧をなす名作。 35歳のマンガ家アシスタント「武田一義」が、突然宣告された睾丸癌。そして始まる闘病生活。 近年のマンガランキングでよくランクインしていたエッセイ系の作品は、悲劇と…

yeah! おひとりさま

「ワカコ酒」を読んだついでで、こちらも読んでみることに。 作者「新久千映」がおひとりさまで映画に行ったり、焼肉に行ったりと一人遊びをルポする作品。 目の付け所は良かったが、作品としてはまぁまぁ。どちらかというと「ワカコ酒」のほうが面白い。 た…

ブスだけどマカロン作るよ

その圧倒的なタイトルに思わず目を引かれたら、「カレー沢薫」だった。即購入、爆笑。 ここまで惜しげもなく自分の痛い過去をさらけだせる女性漫画家も少ない。これは、エッセイ系漫画に必要な才能だ。 表題作以外にも、いくつかの作品が含まれており、「な…

イエローバックス

引き続き「高浜寛」である。 ガロ系デビューに相応しい短編を綴った初期作品集。 海外のベスト・オブ・ショート・ストーリーを受賞したというのも良くわかる作品で、芸術性と儚さが多分に含まれた出来栄えである。しかし、マンガと芸術性というのは、些か難…

四谷区花園町

最近では、「ニュクスの角灯」が話題になったが、今、個人的に最も注目している作者がこの作者「高浜寛」である。 戦前の風俗ライターという珍しい設定の主人公を中心に描かれる本作だが、掲載雑誌の作風に合わせて描かれたエロ系の導入から始まって、徐々に…

ライチ☆光クラブ

カルト系として人気を博する作者「古屋兎丸」が、若き日に影響を受けた劇団「東京グランギニョル」による講演を、紙の上に再現した傑作。 多感な時期に見た作品の感激というものは、心の中には残っていても、外に出すことは難しい。そんな凡人の壁を乗り越え…

グッデイ

面白いの一言に尽きる。 短編の名手「須藤真澄」が、一段の上のレベルに達したと思わされる本作。 人が亡くなる前日に、体が真ん丸の球体に見える現象「玉迎え」この「玉迎え」という設定が、物語的にも、マンガ表現的にも非常に秀逸で、「石坂啓」の「I'm h…

ゆうれい談

大御所「山岸涼子」の描く、実話を元にした幽霊話である。山岸プロの元に集まるマンガ家達が持ち寄った、様々なゆうれい談を実話化した作品で、本格的な恐怖系の作品ではないが、実話と考えると、妙に背筋が寒くなる作品。しかし、それにしても登場する人物…

ナナカド町奇譚

一目見ればわかる独特な画風と、オリジナリティ溢れる世界観を描く短編の名手「須藤真澄」の作品。街に七か所の角がある不思議な街を主人公「なのは」が探検する、ミステリアスメルヘンである。 剥製の店、空を飛ぶ夢を持つ男、サボテンの花、不思議な銭湯。…

怪談人間時計

世の中には、どうにもカテゴリー分類できないマンガがあるわけで、本作「怪談人間時計」は間違いなくそれに該当する。当時、書店でこの作品を見つけた時のインパクトは凄まじかった。そして、中身を読んでまた驚く。とにもかくにも、カルトとしか言いようが…

アオとハル

「たまりば」の作者「しおやてるこ」が描く青春恋愛作品。前作の主人公「ハル」の学生時代を描いた作品だが、物語的にはつながりは無いので別々に読んでも全く問題ない。不器用なメガネ主人公「ハル」が、街で見かけた美少女「アオ」に魅かれていく導入部分…

ヒーローズ・カムバック

(2013年評)これはやはり素晴らしいの一言。 細野不二彦の企画のもと、小学館系の歴代のマンガヒーローが、東北復興支援プロジェクトとして復活した作品。 ギャラリーフェイク究極超人あーる伝染るんですサイボーグ009(島本和彦)うしおととら犬夜叉銀…

女の穴

(2013年評)女性のサガをテーマにしたオムニバス短編集。 悪くもないが特徴も少ない。西島大介のマンガ学校に参加されているようなので、その傍流に位置づけられるのかもしれない。 女性作家は、この手の作品が得意なので、その中で一歩抜きん出るのは大変…

このたびは

(2013年評)相変わらず短編を描かすと上手い作者「えすとえむ」による作品集。 三十路女性のお見合い結婚を描いた「ふつつかものですが」にはじまり、最後の表題作「このたびは」までどの短編も味わい深く面白い。 少し癖のある画風に騙されてしまうが、キ…